アフガンA 子 その3
23日の留守番デーを境に、A子ちゃんは自分の居場所の回りが確認出来た事から少しだけ余裕みたいなモノが生まれたようだ。
時々、家の中の様子を伺っていたりもする。
家の中から見ていると、こっちを見ているが、気配に気付くと、サっと隠れてしまう。
でもオヤツは小さくちぎったモノでも、上手にそっと受け取ってくれるようになった。
家の中を気にして見るようになったので、それまではストレス軽減の為に色々見えない方が…と閉めていたカーテンを開け放ち、わざと家の中を見えるように変えてみた。
色んな事に興味を持ち始めるのは大事なことだから…。
暇潰しになれば…と思い、ガムを進呈してみたが、「これ何?」と、噛んで遊ぶという意味が分からないようだった。
ジジもおもちゃで遊んだ経験が無かったようで、音が鳴るおもちゃを見ても意味が分からないから知らんぷりだし、音が鳴ったらビックリして逃げて行く。(笑)
でもガムは美味しそうな匂いもするので、興味深々になるかと思ったんだけど…。
ちなみにジジはガムは噛みたくて仕方がないんだけど、残念ながら歯が無くて噛めないので、悔し鳴きをします。(涙)
タバサが途中まで噛んで軟らかくなったのをいそいそと運んで来てしゃぶってたりして…、結局タバサに見つかってドヤされて終了です。(笑)
A子ちゃんは、少しだけ余裕が出来たことから、色んな葛藤が始まりました。
家の中で犬や猫が動いているのも人間が動いているのも気になる。
でも、隅っこからは動きたくない…。
おやつやご飯はもらうけど、その手の匂いもクンクン嗅いで確認出来るようにはなったけど…まだ触らせたくはない。
25日の夜から、その葛藤の最初のヤマが訪れました。
クーンクーンと小さく鳴き始め、遠吠えになり、ほっておくとワンワン吠える…。
「A子ちゃん」と声を掛けると一瞬鳴き止むのですが、しばらくすると鳴き始め…。
これが朝の5時まで続きました。
別荘で、隣の家とは比較的距離があるとはいえ、このままでは苦情が来そうだし、A子ちゃんが何を訴えたいのかも分からなかったけど、夜中に家の中に入れようと場所を作り、おいでと促し、リードを引いてみたけど…それは断固拒否だった。
結局朝まで クーン…「Aちゃーん」は繰り返され、その日は仕事が入っていた為、6時半には出掛けなければならなかったけど、4時半から1時間ほどバルコニーで、Aちゃんどうしたい? 鳴きたいの? 寂しいの? 家に入るのは嫌なの?と語りながら寄り添い、毛布の上からそっと体を触っていたら、始めて私の手を舐めてくれました。
一晩中鳴いていて疲れたのか? 少し安心したのか?諦めたのか…、やっと眠ってくれました。
その日は私は仕事で群馬と東京方面へ。
軽井沢への帰宅は夜8時だった。
A子ちゃんは昼頃まではそのままおとなしく寝ていたそうだが、起きたらまたずっと鳴いていたそうだ…。
また今夜も朝まで鳴かれてしまうのか?と、おやつを持ちながら、しばしA子ちゃんと対峙。
おやつを食べて、毛布を掛けてやり、「今日はどうしたい?」などと語りながら…。
毛布の上から体を触っていたが、あまり嫌がらないので調子に乗って頭を撫でたら…始めて嫌がらずに頭を撫でさせてくれた。
私も嬉しかった。
A子ちゃんも嬉しく思ってくれているのだろうか…。
結局その日は夜中の1時くらいに一度だけ鳴いたけど、その後はおとなしく眠ってくれた。
27日も以前から頼まれていた用事があり、朝から外出、軽井沢に戻ったのは夜7時頃だった。
この日は我が家の犬達も一緒に外出で留守だったから、A子ちゃんはのびのびと過ごせたようで、家の中をのぞいたり、バルコニーを歩き回ったりしていたそう…。
定位置の隅っこから1メートルくらい出た、家の中が見やすい場所に、父が敷布を敷いてやったら、そこに座って、家の中を覗いていたらしい。(笑)
でも、人間がバルコニーにいる間は、相変らず定位置の隅っこに逃げ込んでしまう。
土曜の夜は、毛布を掛け直して、少し撫でてあげたら、静かに寝てくれた。
日曜日。
家の中が気になるようで、バルコニー内を行ったり来たり。
排泄物を片付ける用に置いてあったトイレットペーパーをいつの間にか取って、ボロボロに咬んで遊んでいた。(笑)
家に来て初めての遊び。
余裕が出て来た証拠でもあるから、粉々の紙クズを片付けながら、笑いが止まらなかった。
夜中の2時からクーンクーンと遠吠えが始まり、私もフリースを着て、バルコニーでA子ちゃんに付き合った。
もう、私の事はあまり怖くなくなったようで、ケージの前に座り込む私の目の前を通り抜けてうろうろしながら、何かを訴えている。
家に入ろうよと促すと、更に困ったような声になる。
なるべく動かないように座り込む私の匂いを隅々まで嗅いでみたり、顔にクンクンしたついでに鼻でツンっとしてみたり…。
けれど、甘えているようでも馴付いた訳ではなく、私を試しているようだった。
「この人、ホントに大丈夫?」
混乱の中にいるA子ちゃんを見ていると、可哀想で涙が出た。
結局4時半頃に鳴き疲れて寝る態勢になったので、毛布を掛けて、頭や首筋や耳の後ろを撫でてあげて、寝かし付けた。
常日頃、自分の家の元保護犬達も里親探しをしている保護犬達も「可哀想」でくくるのは嫌で、かわいそうだとは思わないで接して来た。
確かに過酷な生活だっただろうけど、犬は過去を振り返ったりしないし、常に現在を生きている。
現在を幸せにしてあげているのなら、可哀想なんかではない。
でも、今のAちゃんは…。まだちっとも幸せを感じていないだろうし、混乱と葛藤のど真ん中にいる。
この先も完全に飼い主が決まるまで、一時預かり先で混乱と葛藤を繰り返すのだろう。
しかも彼女の幸せはその苦しみの先にしかない。
あまり人間に構われず、犬だけで(汚い場所だけど)好き勝手に生きて来たと思い込んでるだろうけど、この先は人間と共存する道をAちゃん自身が選択しなければならないのだ。
それを思うと可哀想で切なくなる。
混乱中のこの時期、やっと私を信じてみようかな…と思い始めているだろう、この時期に、期限の8月が終わろうとしている。
31日に、A子ちゃんはアフガン飼い主の善意の援助を受けて、ドックトレーナーさんの元へ1ヶ月の一時預かりへと移行する。
最後の1日。
どうして過ごそう…。
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